知ってた?名探偵コナンにも百人一首が登場していた

人気アニメ『名探偵コナン』の劇場版である『から紅の恋歌』というのがありますが、こちらは百人一首が使われているミステリーであるのが特徴です。百人一首の和歌が、謎を解くカギとなるかもしれません。

『から紅』というのは、在原業平が詠んだ『ちはやぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川(たつたがわ) 唐紅に 水くくるとは』の『唐紅に』から取っていると考えられます。唐紅とは深紅を意味し、句の内容は神々の時代の昔であっても聞いたことがない。龍田川が紅葉で深く鮮やかな赤に染められるとは、というものです。

在原業平は美男であり奔放さもある恋多き男でした。『伊勢物語』を書いたことでも知られています。また続いては、『忍ぶれど 色に出にけりわが恋は ものや思ふと人の問うまで』という句も名探偵コナンに登場しています。

『純黒の悪夢(ナイトメア)』という名探偵コナンの劇場版で、服部平次が最後に言った「忍ぶれどっちゅうわけか」でも使われているのです。この句に関してはポスターにも登場しました。平兼盛が詠んだものであり、誰にも言わず秘めていたけれど私が恋をしていることは他の人にも知られて、「恋をしているのか」と聞かれてしまった、というものです。

劇中では、服部平次の幼馴染である和葉が、自分の気持ちを表しているからという理由でかるたの得意札としていました。和葉は服部平次と両想いなのですが、それを彼女は知らないので少々切なさを感じさせるでしょう。

『忍ぶれど』の句は歌合せにおいて詠まれたのですが、好きな女性に贈る歌であるという前提で詠まれました。「あなたを想っている」と直球で言わずに、「私が恋をしていることを、周囲の人も知ってしまったのです」として、「私はあなたのことをこれほどに想っています」と暗に言っているのです。

現代でも、付き合いたての相手から「会いたいです」と直球でメールが来たならうれしいでしょう。しかし「夜空を見上げたら星がいっぱいだったから、あなたにも見せたいと思った」というメールをもらった場合でも、ときめくかもしれません。

ただ、名探偵コナンの服部平次の場合は、まだ和葉とは仲が良い段階であり告白もしていないので、和葉にこうしたメールを送ったとしても、想いは気づかれず届かない可能性があります。

名探偵コナン『から紅の恋歌』のポスターでは、『めぐりあひて 見しやそれともわかぬ間に
雲がくれにし夜半の月かな』という句の『くもかくれにしよはのつきかな』という一節が使われています。

紫式部の句であり、幼馴染に久しぶりに出会ったけれどすぐに帰ってしまった。あなたなのかどうかも分からないくらいの短い間であり、まるで雲の間に隠れてしまう月のように。という意味があります。

また、式子内親王の詠んだ『玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば しのぶることの弱りもぞする』という句の、『しのふることのよわりもそする』がポスターに使われています。私の命よ、絶えるなら絶えてしまえ。生きながらえれば恋心を忍んでおけなくなるかもしれないから。という意味です。

ちなみに、玉の緒とは宝石等の玉を通す紐のことであり、魂と体を繋ぐものともされています。