百人一首に登場!漫画にもなった『ちはやふる』の意味について

百人一首が登場する『ちはやふる』という作品があります。これは末次由紀原作の漫画であり、アニメや実写映画化もされている物語です。競技かるたに熱中する少女の物語であり、実際の競技かるたが広く浸透するきっかけにもなりました。

作品のタイトルは『ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは』という百人一首の中の選歌が由来しています。“ちはやふる”とは『勢いの強いさま』という意味であり、主人公がそれを知り表現していく物語なのだと、作者は語っているのです。

“ちはやふる”という言葉については、『いちはやぶ』という荒々しく振舞うことを意味する動詞から派生したとされています。『時代別国語大辞典 上代編』によると、『勢いある、強暴な、あらあらしい、連体修飾語の例のみ』としていて、万葉集や古事記の例が挙げられているのです。

“ちはやふる”は、枕詞として使われることが多いです。要するに、意味もしくは音に関してある言葉を導き出す言葉が、枕詞となります。それに加えて、枕詞よりも文字数が多く同じような働きをするものを、序詞というのも覚えておきましょう。

“ちはやふる”という言葉の場合は、『神』という言葉を導き出す枕詞として万葉集でも使われていることが多いです。例えば『玉葛 実不レ成樹尓波 千磐破 神曾著常云 不レ成樹別尓』が原文であり、『玉葛(たまかずら) 実成らぬ木には ちはやぶる 神そつくといふ 成らぬ木ごとに』が読み下しです。

訳は、『(玉葛) 実のならない木には (ちはやぶる) 神がとりつくそうです 実の成らない木ごとに』となります。『ちはやぶる』の説明については、古代の神々の中には悪霊妖怪の類もあり、それらが凶暴かつ残忍に振舞い人の生活さえも脅かすこともあったため、かけたのだという話もあるのです。

“ちはやぶる”は元は荒々しいという意味の言葉だったものの、時として人に脅威をもたらすような怖い神たちを連想させることから、いつの間にか『神』を導き出す枕詞へとなりました。

“ちはやふる”は勢いが激しいことや荒ぶるといった意味があると説明しましたが、どちらも勢いの強さを表現してはいるものの、性質が違う点を知っておきましょう。荒ぶるというのは乱暴さが感じられて安定しない力ですが、“ちはやぶる”だと勢いが1点だけに集中している状態となっています。

また、“ちはやふる”と”ちはやぶる”のどちらが正しいのかと疑問に思う方もいるかもしれません。これについては、どちらも正しいというのが答えでしょう。歌が詠まれた平安時代には濁点が使われなかったので、”ふる”と書き”ぶる”と読んでいたと考えられます。

それもあってか、今でも”ぶる”と書かれているケースがありますが、それでも問題はないということです。『ちはやふる』の作者によると、”ふる”の方が細胞の揺らめきのような繊細な感じを受けるし、見た目も響きも可愛いといった趣旨のことを話しています。

それに、子供が初めて札を見ても”ぶる”とは読まないという理由から、”ちはやふる”というタイトルになったのでした。